ココペリという名前を知らなくても、背中を丸めて笛を吹くような人物のシルエットを見たことがある人はいるかもしれません。
インディアンジュエリーではペンダントやリング、バングルなどに使われるモチーフで、日本では「幸運を運ぶ精霊」「豊穣や子宝のお守り」と紹介されることもあります。
ただ、ココペリを単純に「幸運の意味を持つホピ族のマーク」と覚えてしまうと少し違います。
ココペリはアメリカ南西部の先住民文化のなかで広く表現されてきた存在で、ホピ族のカチナ(カツィナ)やジュエリーにも実例があります。一方、その背景を一つの意味だけに固定するのは難しいモチーフでもあります。
この記事では、ココペリがどんな存在なのかを整理したうえで、インディアンジュエリーとして選ぶならどこを見るべきかまで紹介します。
ココペリとは?笛を吹く姿で知られるモチーフ
ココペリの大きな特徴は、背中を丸め、笛を吹いているように描かれる人物の姿です。
米国立公園局が公開している教材(英語)では、この背中の曲がった笛吹きの人物が、アメリカ南西部の先住民アートに広く表現されてきたことが紹介されています。
その正体については、プエブロの集落を移動していた交易者ではないかと考える研究者もいる一方、現在ではアメリカ南西部を象徴する人気のモチーフとしても知られています。
昔からの文化的な背景と、現在シルバーアクセサリーなどで見かけるココペリのデザインは、少し分けて考えた方が分かりやすいでしょう。
ホピ族の作品にも実際に残されている
ココペリとホピ族の関係は、単に日本のアクセサリーショップが作った説明ではありません。
スミソニアン国立アメリカ・インディアン博物館の収蔵記録(英語)には、1965年にホピ族のウィラード・サキーステワが制作したココペリが残されています。
収蔵記録ではホピ・プエブロの作品で、カチナ(カツィナ)として分類されています。
さらに、ジュエリーにも実例があります。
同博物館には、ホピ族作家ヴィクター・H・クーチワイティワが1960年に制作したココペリ柄のシルバーバックル(英語)が収蔵されています。銀を使い、オーバーレイによって作られた作品です。
ココペリがホピ族の作品に取り入れられてきたこと自体は、こうした実物資料からも確認できます。
ホピ族ジュエリーでよく見られるオーバーレイについては、ホピ族アクセサリーの特徴と選び方で詳しく紹介しています。
「幸運のお守り」だけで説明しきれるものではない
日本でココペリを検索すると、「幸運」「子宝」「豊作」「健康」など、さまざまな意味を並べた説明が出てきます。
ただし、ココペリには一つだけの決まった意味がある、と考えない方がよいでしょう。
米国立公園局の教育資料に掲載されたプエブロの研究者グレゴリー・カジェテ博士の解説では、ココペリは自然の豊かさや生命を生み出す力、幸運、文化、芸術、音楽、踊りなどと結び付けて説明されています。
「幸運」という説明そのものに根拠がないわけではありません。
ただ、そこから「身につければ○○の効果がある」という現代的なお守りの効能まで同じものとして扱うと、もともとの文化的な背景から離れてしまいます。
ココペリにはどんな意味がある?
ココペリについてよく目にする意味を整理すると、次のようになります。
| よく見かける説明 | 捉え方 |
|---|---|
| 豊穣・生命 | 自然の豊かさや生命を生み出す力との結び付きが確認できる |
| 幸運 | プエブロ文化についての資料でも幸運との関係が語られている |
| 子宝 | 豊穣や生命との関係から、現代ではこの意味でも紹介されることが多い |
| 音楽・踊り | 笛吹きの姿だけでなく、音楽や踊りとの結び付きも資料に残る |
「どれが唯一の正解か」と考えるより、複数の背景を持った存在だと理解する方が無理がありません。
豊穣や生命と結びつけて語られてきた
米国立公園局の教育資料(英語)では、ココペリを種を運ぶ存在として紹介し、自然の豊かさや生命を生み出す力との関係について説明しています。
そのため、ココペリを豊穣や生命の実りと関係する存在として捉えることには根拠があります。
日本でよく見る「子宝」という説明も、こうした生命や豊穣との結び付きを分かりやすく表したものとして見ると理解しやすいでしょう。
ただし、「ココペリを身につければ必ず子宝に恵まれる」といった意味まで資料が保証しているわけではありません。
ジュエリーとして楽しむなら、豊かさや生命を連想させる背景を持ったモチーフとして捉えるくらいが自然です。
地域や文化によって解釈は一つではない
ココペリをホピ族だけのモチーフとして扱わないことも大切です。
米国立公園局の資料では、背中を丸めた笛吹きの人物がアメリカ南西部の先住民アートに広く見られると説明されています。
その一方で、スミソニアン国立アメリカ・インディアン博物館には、ホピ族のカチナとして制作されたココペリも収蔵されています。
同じ「ココペリ」という言葉でも、古い岩絵などに描かれた笛吹きの人物、ホピ族の作品、現代のジュエリーに使われる図柄まで背景は一様ではありません。
通販の商品説明にある短い「意味一覧」だけで文化全体を決めつけない方がいいでしょう。
「幸運」の意味はあっても、お守りの効能とは別
「ココペリ=幸運」という説明も、すべて後から作られたものというわけではありません。
先ほどの米国立公園局の資料でも、ココペリと幸運との結び付きが紹介されています。
ただし、文化的に「幸運と関係する存在」であることと、「このアクセサリーを着ければ幸運が訪れる」という商品としてのお守り効果は別の話です。
現在ではココペリが一般的なシルバーアクセサリーや雑貨などにも広く使われているため、文化的な意味と現代の商品説明を分けて見ると分かりやすくなります。
意味に惹かれて選ぶのももちろん一つの楽しみ方。
ただ、インディアンジュエリーとして買いたいのであれば、ここからもう一歩踏み込んで「誰が作った作品なのか」を見ておきたいところです。
インディアンジュエリーではココペリをどう表現する?
ココペリは人物のシルエットに特徴があるため、銀の明暗や切り抜いた形を生かすデザインとも相性のいいモチーフです。
実際のホピ族作家の作品を見ると、その表現方法がよく分かります。
ホピ族作家のオーバーレイ作品にも使われている
スミソニアン国立アメリカ・インディアン博物館に収蔵されている1960年のココペリ柄バックルはシルバー製で、オーバーレイを使った作品として記録されています。
オーバーレイは、模様を切り抜いた銀板と下になる銀板を重ね、銀色の部分と奥まった黒い部分のコントラストで図柄を浮かび上がらせる技法です。
ココペリのようにシルエットそのものに特徴がある図柄では、石を使わなくても銀の濃淡によって存在感を出せます。
現在の販売店でも、ホピ族作家によるココペリを取り入れたリングやバングルなどを見つけることができます。
ココペリが描かれているだけではホピ族作品とは限らない
ここは通販で特に間違えやすいところです。
楽天市場などで「ココペリ」と検索すると、
- ホピ族の作家が制作したインディアンジュエリー
- 作家や部族が明記されていないシルバー925製品
- 「ホピ風」「ネイティブ系」として販売されるアクセサリー
などが同じ検索結果に出てきます。
ココペリは現在広く使われているデザインなので、ココペリの絵が入っていることと、ホピ族の作家が制作したことは別の話です。
デザインとしてココペリが好きなら、一般的なシルバーアクセサリーを選ぶのも自由です。
ただ、「インディアンジュエリーとしてココペリを買いたい」という場合は、モチーフだけで判断しないようにしましょう。
ココペリのジュエリーを買うなら何を見る?
ココペリの作品を探すときは、まず次の4点を見るとかなり絞りやすくなります。
- 作家名が書かれているか
- 所属部族が確認できるか
- スターリングシルバーなど素材の記載があるか
- リングサイズやバングルの内周、ペンダントの実寸が分かるか
意味の説明が長い商品より、誰が作ったのか、何でできているのか、どのくらいの大きさなのかが具体的な商品の方が判断材料は多くなります。
インディアンジュエリーとして買うなら作家名と所属部族を確認
例えば楽天市場のSILVER501では、ホピ族の作家アンブローズ・ナモキによるココペリのバングルが販売されています。
ココペリをオーバーレイで表現したスターリングシルバー製の作品で、作家名と所属部族だけでなく、内周や開口部などのサイズも掲載されています。
こうした商品なら、「ココペリという柄が入っている」というだけでなく、ホピ族の作家による作品だと確認したうえで選べます。
同じくホピ族の作家アルヴィン・テイラーの作品にも、ココペリを取り入れたリングやペンダントなどがあります。
インディアンジュエリーは一点ごとの在庫が変わりやすいため、個別商品だけでなく同じ作家の作品一覧から探す方法もあります。
インディアンジュエリーそのものの見分け方から確認したい場合は、インディアンジュエリーとは?種類・特徴と本物の見分け方も参考になります。
リング・バングル・ペンダントは使い方で選ぶ
ココペリというモチーフが決まったら、次はどのアイテムで取り入れるかです。
| アイテム | 向いている選び方 | 通販で確認するところ |
|---|---|---|
| ペンダント | ココペリの姿をはっきり見せたい | トップの縦横、バチカン、チェーンの有無 |
| リング | 普段から手元で楽しみたい | 号数、リング幅、サイズ直しの可否 |
| バングル | オーバーレイの図柄を広く楽しみたい | 内周、開口部、幅、調整可否 |
特にペンダントは身体のサイズに左右されにくく、ココペリのシルエットそのものを楽しみやすいアイテムです。
ただし「トップのみ」で販売されている商品もあります。手持ちのチェーンを合わせるなら、トップの大きさだけでなくバチカンを通るかまで確認してください。
ペンダントトップとチェーンの合わせ方は、インディアンジュエリーのネックレス選びで詳しくまとめています。
バングルの場合はデザイン以上にサイズ確認が重要です。インディアンジュエリーのバングル選びで内周や開口部の見方も確認できます。
「ネイティブ風」のシルバーアクセサリーとは分けて考える
ココペリのデザインが欲しいだけなら、作家や部族にこだわる必要はありません。
手頃な価格のシルバーアクセサリーから探す選択肢もありますし、見た目が気に入って買うこと自体に問題があるわけではありません。
一方、インディアンジュエリーとして買うなら話は別。
商品名に「ココペリ」「ネイティブ」「ホピ風」と書かれているだけではなく、作家と所属部族まで確認したいところです。
モチーフを見る。次に作り手を見る。最後に素材とサイズを見る。
この順番なら、意味だけに引っ張られず作品そのものを選びやすくなります。
ココペリを選ぶなら、意味だけでなく作品そのものも見てみよう
ココペリは、背中を丸めて笛を吹く姿で知られ、アメリカ南西部の先住民アートに広く表現されてきた存在です。
ホピ族のカチナやオーバーレイのシルバージュエリーにも実例があり、自然の豊かさや生命、幸運、音楽などとの結び付きも資料から確認できます。
ただし、「幸運」「子宝」といった一語だけですべてを説明できるモチーフではありません。
インディアンジュエリーとして選ぶなら、意味の一覧だけでなく作家名・所属部族・素材・技法まで見てみる。
同じココペリでも作家によって線の取り方や表現はかなり変わります。そこまで見比べると、単なる「縁起のいいマーク」として選ぶより面白くなってきます。
